昆虫食
皆さん、ご存知でしょうか?
ここ長野県は昆虫食が盛んな地域で 、 蜂の子、イナゴ、ザザ虫、珍しいところでは蚕のサナギなど食してきた文化がございます。
私が八ヶ岳の麓に住んでいたときは、秋になると草原にイナゴを取りに来た地元のおばあちゃん達が長ひょろい袋をもってイナゴを追いかけ、
そのあとにのんびりお弁当を食べるほのぼのとした秋のひとこま、というものが見られて、なんかいいなぁと思っていました。
ただ私、福岡生まれ、海辺育ち。長野に居を構えるまでは虫を食料として見る感覚がなかった。そのためにいくらでも食べる機会はあったはずなのですが、
興味はありつつもなんとなく遠慮し続けていました。ただ、(イナゴの唐揚げは小エビの味)
耳を疑うような、衝撃のフレーズを長野に来て1年目に二十歳にもならないイケイケのアンちゃんから聞いてから、嘘だろとは思いつつも、ずっと興味は持ち続けていました。
何故ならば私は食べるのが好き、そして海老が好き。
北は北海道の北海しまえびから、徳島の海部川の手長海老、西表島で車エビ、その他、伊勢海老にウチワエビ、ウチダザリガニ、アメリカザリガニ、ヌマエビまでと
幅広く海老と見ればとりあえず捕まえ食してきたのです。
そんな私にイナゴの唐揚げは小エビの味というのは魔法の言葉でもありました。
ただ刷り込みというものは恐ろしい。虫は食べちゃいかんとおそらく赤ん坊の頃から教育を受けてきたので身体が拒絶してしまうのです。
やはり一人では無理だ!
旅は道連れ。昆虫食の長い旅には誰かパートナーが必要だ!
…と思っていたところ、でました樹木医、若林先生。あらゆる方面に興味を示すこのお方、今度は昆虫食にも興味を持っているらしい。
虫は牛や豚を育てるよりも生産性が良いし、食糧難の地球を救う!そして、何よりうまい!(らしい)とおっしゃる。が、ご本人は虫は食べるのが苦手。
いつか、食べてみたい。でも、こわい。そんな期待と恐怖が入り交じった日々を悶々と過ごしておりましたが、その時は突然やって来ました。
それは私が山チームから特伐チームに移る頃、朝早くに若林先生と二人でイワナを釣り、昼に先生持参のフライパンでイワナを焼き、みんなで食べ終わった時のことでした。
目の前には油の残ったフライパン、その回りをふと跳びはねるイナゴ。
これ以上のシチュエーションはないでしょう。
一瞬以上の躊躇の後に意を決してイナゴを食べることになりました。
まずそこらじゅうに跳び跳ねるイナゴを捕まえ、そして手のなかでモゾモゾ動いているやつをエイヤッと熱した油に投入しました。
予想に反してグレーのイナゴが赤く変色します(エー、なんかえらいカラフルになって余計食欲そそらないんですけど)、それと同時にお腹がパチパチとはぜながら、
みょーんと伸び、(うわっ、そんなん聞いてない、ただただ気持ち悪い)、念には念をいれて必要以上にカラッと揚がったところを引き上げました。。
(いやいや、無理やろ。これ)
若林先生、豊永班長も全く同じ感想でした。
でも、ブラックタイガーだって黒とか言いつつ焼いたら赤に変色するし、エビだって虫みたいな形と言えばそう見えてくるし、虫がおいしく食べれないって先入観だし、
もう目の前にカラッと揚がっちゃってるし、命いただいちゃってるし、、、
イナゴを揚げた時から上がり続けた心拍数はいよいよ頂点。塩をパラパラと振りかけて、
一気に口の中へ。❗❗❗
エビ❗まさに小エビ。揚げ過ぎたのか皮だけの小エビ。後ろ足が歯に挟まってとれない。でも、味はまさしくエビ❗❗
普通にうまい❗
嫌がる豊永班長、あんなに興味を持っていたのに尻込みしている若林先生にイナゴの旨さを説き、半ば強引に二人に食べてもらいました。
二人も、食べてみれば、目を丸くしてうまい!エビの味!と全く同じ感想。2匹目はもうイナゴが赤くなるのもお腹がみょーんと伸びるのも全く気にならず
、普通に塩をパラパラと振りかけて食べていました。人間の慣れというものはすごい❗
そして、過程は端折りますが、イナゴの後に調子づいて食べたコオロギはもっと濃厚なエビの味!まさにエビの王様、車エビ!
昆虫食の世界の入り口に立ったばかりですが、その世界は深くて面白そうだということが分かりました。
最後に著作権の許可はいただいてませんが、次の日の早朝に若林先生から送られてきたラインをもって終わりにしたいと思います。
(わたしはイワナ、わたしはバッタ、わたしはソフトクリーム
食べることと食べられることの境は曖昧でした。
食べたイワナやバッタは体の一部となって私と共に生きています。
身を置く地、自然が近くなりました。
自然と共に生きる。
これからもよろしく!)
とう よしかつ