OUR FIELDS事業フィールド

柳沢林業は、狭義の山にとどまらず、以下の4つのフィールドで事業を行っています。山をよくしていくには、山と人間のくらしのつながりをつくることが必要だと考えるからです。豊かな自然に囲まれた松本平でも、人々の暮らしは自然から離れ、心身の不調和を感じる方もいます。くらしに必要なものを身近な山から調達する。山と人との距離を縮めて心の豊かさを取り戻す。そんなくらしがよい山づくりにつながると信じて、事業に取り組んでいます。
いのちの源である山が、私たちのスタートでありゴールです。一般的に林業と言ってイメージする山林にとどまらず、里山や農地を含めた広義の山において事業を展開し、継続的ないとなみづくりに取り組んでいます。

01 山のいとなみ

森林づくり

私たちの本業はあくまで木こり。木材生産という狭義の林業だけでなく、環境保全や水源、観光的価値など、山には多様な役割があります。未来の姿を具体的にイメージしながら、山づくりに取り組んでいます。切った木を活かし、多角的に地域材を使うことが、その背後にある林業を守り、森林を守ることにつながります。
松本の美しい山の風景と、おいしい水と空気を、私たちは当たり前のものと思ってしまいがち。それらの恵みを生み出してくれる山に敬意を表し、みなさんにもその恵みに気づいていただけるよう活動しています。

里山デザイン

その昔、里山は共有林でした。ある時代を境に個人所有になりましたが、その 仕組みが里山の荒廃を招いてしまっています。土地の所有者と居住者と利用したい人とが一致しない状況の中で、どのように里山を蘇らせるか。私たち林業会社が整備するだけでなく、関係者を増やすことで人々の主体的な関わりを生み出したいと考えています。単なるボランティアにならないよう、いとなみの創出と、裏山のようなこどもの居場所づくりを両輪に里山を耕し続けています。山が多くの人に楽しまれ、地域に開かれた場となるよう、様々な取組みを行っています。

循環型農業

昔、山は農業用の水の源でありたい肥用の落ち葉を調達する場であり、そのために山を管理するという考えが根付いていました。現在は石油製品である農薬や資材などを使うようになり、結果として山と農地は分断され、遊休農地が増えています。農地が荒れると獣害等が多くなり、人が住みにくい場所となってしまいます。柳沢林業の近隣の里山でも、住民の高齢化に伴い遊休農地が増えていました。担い手がいないなら私たちがやろうと、田んぼを借り、自分たち用の米づくりから農業を始めました。
「林業会社がなぜ農業?」と聞かれることも多いのですが、山と農は切り離せない関係。そもそも、山の水が木々を育て、川になります。人の暮らしの源には山でいとなみがあり、山の恵みの最たるものは水だったのだと、林業が本業である私たちも気づかされました。山から続く命をいただいて、人間は生かされている―。そんな思いをもって、農業に取り組んでいます。
石油などの地下資源が当たり前に利用できるまでは、ありとあらゆるものを山から調達していました。自然素材へのニーズは時代とともに変わっても、心身を豊かにしてくれるという本質は変わりません。私たちは山の恵みを暮らしに取り入れるお手伝いをしていきます。

02 恵みを分かちあう

丸太生産

山で切った木は、まず原木のまま販売します。原木は市場で売買されますが、松本平で産出量が多いのはアカマツとカラマツです。アカマツは、昔は曲がり梁などに使用され、今は主に床材として利用されます。意外なところでは、食べ物を包む経木や陶芸用の薪、だんじりの車輪などにも使われています。カラマツは、合板や集成材だけでなく、乾燥技術の向上で建築構造材にも利用されるようになっています。

製材加工・販売

柳沢林業では、自社製材した製材加工品も販売しています。市場での販売は相場価格が決められ、搬出や山づくりの経費がまかなえないためです。林業会社が製材まで手掛けることは一般的ではありませんが、自分たちで加工まですることでその解決の糸口を探しています。薪やパルプにしてしまうには惜しい木を選別し、一枚板などに加工し、里山イベントのソマイチなどを通して、一般の方に直接お渡しできる機会も増えてきました。山を知る木こりだからこその、素材のよさ・面白さを活かす使い方の提案を行っています。

薪・ストーブ事業

炎のゆらめき、染みわたるような暖かさ。炎は原始的な生きる喜びを思い起こさせてくれます。柳沢林業は、薪と薪ストーブの販売も行っています。オール電化の普及や街なかでの焚き火の禁止などで、人と火の距離は離れてしまっています。しかし近年、化石燃料に頼らないエネルギー源として木質バイオマスが注目され、中でも薪は加工度が低く地産地消できることから、改めて広がりを見せています。薪ストーブ用の薪は直販でお届けし、キャンプ用の少量の薪はネットショップでの販売を行っています。 薪ストーブ販売においては、アフターメンテナンスも承っています。薪と薪ストーブの販売を通して、火のある暮らしの楽しさと、山を知るきっかけをつくっていきます。

農産物生産・販売

事務所のある松本市岡田周辺で、農薬・化学肥料を使わず米・野菜を育てています。丘陵地でもあり果樹園も多い土地柄、プルーン等の果樹栽培にも取り組みはじめました。林業目線で山と農地のつながりをとらえ直し、土地の力と植物の力を活かして、力のある農産物を育てていきます。身近な山の恵みを、食べ物の形に変えて、皆さんにお届けしています。

日本酒生産・販売

© shota kumagai
山の恵みは水である。そんな思いから、酒米を育て日本酒の醸造も行っています。長野県で開発されたその名も「山恵錦」という酒米を育て、松本市街地に唯一残る善哉酒造さんと協働して生産に取り組んでいます。名水「女鳥羽の泉」を使っての仕込みには、私たちも参加。身近な山の恵みである水で米を育て、地元の人と共につくった酒です。香り高くすっきり切れ味よい仕上がりとなりました。普段日本酒になじみのない方もぜひお試しください。
地元の木材を活かした空間づくりや庭づくりを通して、まちなかでも自然を感じられる場を形にしていきます。日常の中で、山や自然を身近に感じる松本らしいライフスタイルをつくり、山からの循環を街に広げていきます。

03 街に広げる

木質空間
プロデュース

松本では少し見上げれば雄大な山の景色が目に入ります。では、その山の風景にふさわしい街なみを、私たちは作れているでしょうか。柳沢林業では、地元の木を活かした木質空間のプロデュースにも取り組んでいます。木こりだからこそ知っている、木々の色合い、形状、素材感が活きる空間を、ひとつひとつお話を伺いながらご提案していきます。規格化商品をたくさん揃えることはできませんが、身近にあるものを活かした松本らしい空間づくりをお手伝いしています。

特殊伐採

住宅や寺社など、暮らしの身近にある樹木の管理も行っています。木が大きく育ち、近くに建造物等があり根元から切り倒せない場合は「特殊伐採」という方法を採用します。邪魔だから、葉が落ちるから、と強剪定をするのではなく、木がこれからも健やかに人の暮らしに寄り添っていける形を、オーナーさんとご相談しながら模索していきます。身近な樹木への思いやこれまでの歴史を大切に、取り組んでいます。

庭づくり

庭木などの身近な緑は、気づきや安らぎをもたらし、人と自然の距離を近づける大切な存在。柳沢林業では、庭の植栽管理・樹木管理も行っています。庭という限られた空間の中で、木々が健やかに育つように手助けし、住む人もその心地よさを享受できる形をつくります。身近な木々との関わりを通して、緑と人をつなぐ橋渡しをしていきます。

まちなか緑化

日本中で都市化が進み、緑が少なくなっています。ヒートアイランド現象への反省から、まちなかに緑を取り戻そうという取り組みも増えてきました。しかし、ただ市街地に緑を植えるだけでは落ち葉などが問題となり負の遺産となりかねません。一般の方がその緑と継続的な関わりを持てる形をつくることが必要です。まちなかの緑を通して一般の方の自然へのつながりを生み、100年後にありがとうといわれる松本の街なみをつくっていけるよう、私たちは取り組んでいきます。
人が入ることで、山は豊かになります。まずは里山でのイベントや、キャンプ場でのアクティビティをきっかけに山を知ってもらう。そして継続的に山に関わる人が増え、山とともにあるくらしにつながることを目指しています。

04 人をいざなう

c shota kumagai

里山イベント

身近に山がある松本でも、普段の生活と山は乖離してしまっています。一般の方に山を身近に感じてもらう場として、里山でのイベントを行っています。2018年から松本市岡田の里山で開催している「ソマイチ」では、木工ワークショップ、薪割り、木登り、乗馬体験、木材販売などを実施。多くの方が訪れるイベントに成長しました。山の魅力を伝え、林業への理解を広げることを目的として、これからも様々なイベントを開催していきます。

里山に生きる馬・ヤマト

2016年北海道ばんえい競馬の引退馬「ヤマト」を会社に招きました。木材を馬で運搬する「馬搬」や田畑を馬で耕す「馬耕」に、共に取り組んでいます。遊休農地に放牧し、草を食べたヤマトの糞は、木工で出たおがくずとともに優秀なたい肥となり、農地に撒かれます。また、ヤマトの存在をきっかけに地域の人々がこの場所を訪れ、様々な取り組みや交流が生まれています。ヤマトが生む、農業と林業、自然と人、人と人とのつながりを、地域づくりへと広げていきます。

キャンプ場運営

© shota kumagai
柳沢林業では、美鈴湖もりの国オートキャンプ場の運営を行っています。ベースにあるのは、「自然を非日常として切り離すのではなく、もっと気軽に感じてほしい」という林業者としての思い。森・木・焚き火を楽しみ、地元企業ならではのローカルなつながりを活かした、新しい価値観のキャンプ場を目指しています。キャンプブームだからではなく、自然体験の入門編として、山との関わり方をお伝えしていきます。柳沢林業ならではのキャンプ場へ、ぜひ一度遊びに来てください。

フォレストアクティビティ

山の恵みを「モノ」として買うだけでなく、直接山に行き体験する「コト」を提供しています。林業ガイドツアーやロゲイニング大会をはじめ、湖でのSUP体験、自分を見つめなおす森林セラピーやホースセラピーなどのプログラムがあります。山で得られる楽しさや豊かさは、実際に山に行き体験してもらうのがやはり一番。これからも様々なプログラムをご提供していきます。

コミュニティ・場づくり

最終目標は、みんなが山に入ることだと、私たちは考えています。かつての里山のように、人々の営みが循環し、多様な自然環境をもたらす場となることが理想ですが、コミュニティをつくっていくことはその一環。多様な取り組みを通して、「人は自然の一部なんだ」という気づきを多くの人に感じてもらえるよう、これからもフィールドを広げていきます。